今日は、いまからさらに時代がくるであろう環境ETFの比較記事となります。
環境関連のETFはかなり種類があるのですが、ここではよくYoutubeやブログでも取り上げられているQCLN、ICLN、PBDを取り上げたいと思います。
あけましておめでとうございます。
本年もちょこちょことブログを書いていきますので、よろしくお願いいたします。
みなさんこんにちは&こんばんは。「極小なことからコツコツと」管理人のけんとです。
いつものように先に結論です。
先に結論
- バイデン氏が大統領になることで、「環境テーマ」に大きな追い風が吹くことが予想されます
- この環境を取り扱ったETFは結構あるのですが、国内で購入に検討するのは3種:ICLN、QCLN、PBD
- この3つの比較をすると、ここ1年でも、10年でもQCLNが最も良いパフォーマンス
- でも、3つのETFはそれぞれ特徴があるので、特徴を理解した上で購入を検討してみてはどうでしょうか
- ついでに、気候変動への「適応」という視点も考えてみてはどうでしょう
環境の時代がやってくる?
米国の次の大統領がバイデン氏となります。
バイデン氏はパリ協定に復帰する方針をしめしています。
なので、米国はこれから温室効果ガス削減に大きく舵を切っていくことになります。
米、温暖化対策「世界を主導」 パリ協定復帰へ―バイデン氏 https://t.co/vpVUwCcmIQ
— 時事ドットコム(時事通信ニュース) (@jijicom) December 20, 2020
また、バイデン氏は今後4年間で2兆ドル(約206兆円)にもおよぶ資金を環境インフラ事業に投下することを公約しています。
なので、パリ協定の復帰と併せて考えると、再生可能エネルギーの普及促進が既定路線と考えて差し支えないかと思います。
バイデン氏、環境・インフラ投資に2兆ドル 雇用創出に活用 https://t.co/pmZv3m7ZsR
— 日本経済新聞 電子版 (@nikkei) July 14, 2020
2020年1月5日投稿された「みんなの株式ニュース」(こちら)の人気テーマはこちらです。
1位が「再生可能エネルギー」、2位がEVのリチウムイオンバッテリーの次世代版である「全固体電池」、4位に「電気自動車関連」がランクインです。
しかも、5位もクリーンエネルギーの「水素」、6位はなぜか再生可能エネルギーと別枠の「洋上風力発電」です。
人気テーマ=必ず株価が上がるテーマではありませんが、10個のテーマのうち、5つが環境関連であることを考えると、相当数の人々が環境を重要視していると言えるでしょう。

環境ETFは結構多い
ETF.comで検索をかけると「environment」で3件、「renewable energy」で12件のETFがヒットします。
なので、15件もETFがあったりします。
この15件のリストは以下のとおりです。
もちろん、これらのETF以外にも間接的に環境ETFのようなものもあるとは思いますが、上記のカテゴリに振り分けられているものが15種です。
Ticker | Name | 運用資産額 |
ICLN(購入可) | iShares Global Clean Energy ETF | $4.58B |
TAN | Invesco Solar ETF | $3.55B |
PBW | Invesco WilderHill Clean Energy ETF | $2.57B |
QCLN(購入可) | First Trust NASDAQ Clean Edge Green Energy Index Fund | $1.92B |
ACES | ALPS Clean Energy ETF | $760.28M |
PZD | Invesco Cleantech ETF | $461.17M |
FAN | First Trust Global Wind Energy ETF | $400.46M |
PBD(購入可) | Invesco Global Clean Energy ETF | $356.21M |
SMOG | VanEck Vectors Low Carbon Energy ETF | $262.45M |
CNRG | SPDR S&P Kensho Clean Power ETF | $214.06M |
YLCO(購入可) | Global X YieldCo & Renewable Energy Income ETF | $85.33M |
CTEC(購入可) | Global X CleanTech ETF | $56.44M |
EVX | VanEck Vectors Environmental Services ETF | $42.62M |
このうち、SBI証券・楽天証券で購入可能なものがICLN、QCLN、PBD、YLCO、CTECの5種です。
それ以外は、サクソバンク証券などから購入する必要があるので、ちょっと手間がかかってしまいます。
そして、この国内証券会社で購入できる5種のうち、YLCOとCTECは運用資産額が非常に小さいです。
なので、必然的にわたしを含む国内在住の投資家諸兄はこの記事のタイトルにもある、ICLN、QCLN、PBDのいずれかを選ぶことになるかと思います。
ちなみに、わたしはICLN、QCLN、PBDすべてを保有したことがありますが、PBDは現在持っていません。
持っていた当時、やはり運用金額の少なさから、値動きが非常に少なく、流動性にとっても不安がありました。
なので、PBD以下の運用額であるYLCOとCTECはかなり流動性に難ありと思ってもらって構わないかと思います。
TANの運用パフォーマンスが最近は非常に優れていますが、残念ながら国内では購入できません。
(また、なぜ既存技術の太陽光がここまで注目されるのかがちょっと不思議ではあります)
ちなみに、最近になって目にするようになったリチウムイオンバッテリーのETF、LITについては以前記事にしましたので、よければ併せて読んでもらえたらと思います。
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【EVで伸びる?】リチウムのETF、LITのパフォーマンス
EVがますます伸びていく未来になりそうです。 北欧では新車販売の半数以上がEVになっているようですし、EVが自動車の主力となっていくことは確定ではないでしょうか。 諸外国の動向を受けでしょうが、先日こ ...
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ICLN、QCLN、PBDの特徴をチェック
では、この3つのETFの特徴をチェックしていきましょう。
3つともほぼ同時期に設定されています。
ICLNが最も経費率が低く運用金額が多くなっていますが、組入銘柄数は最も少なくなっています。
一方で、PBDはその真逆の傾向にあります。
QCLNはその中間という特徴となっています。
銘柄 | ICLN | QCLN | PBD |
運用会社 | Blackrock | First Trust | Invesco |
設定年月日 | 2008年6月 | 2007年2月 | 2007年6月 |
経費率 | 0.46% | 0.60% | 0.75% |
組入銘柄数 | 33 | 45 | 105 |
運用金額 | $4.58B | $1.92B | $356.21M |
では、次に組入銘柄のTOP10を見てみましょう。
各銘柄の組入比率はやはりPBDが低いです。
トップ10を見ても知らない銘柄がかなりあります。
というか、QuantamScape(全固体電池)とFuelCell Energy(燃料電池)以外知りませんでした(汗
先程のテーマ第2位の全個体電池のQuantamScapeが入っているのはおもしろいですね。
なので、PBDが一番分散が効いているといっていいでしょう。
銘柄数ではICLNのほうがQCLNよりも少なかったのですが、QCLNは組入比率上位の銘柄の比率が非常に高いです。
また、EVと関連が深い、Tesla(EV)、NIO(EV)、Albemarle(リチウムイオン電池)の3銘柄で21.24%もあります。
なので、再生可能エネルギーだけではなく、EV関連も多く組み入れてあるのがQCLNです。
QCLNの正式名称を見ても分かる通り、NASDAQ上場企業を扱っていることが影響しているかと思います。
ICLNはこの3つの中では一番再生可能エネルギー、発電部門にフォーカスしたETFです。
パット見この表には載っていませんが、とっても一つ大きな特徴があります。
なんと、NIOやXinyi Solarといった中国の銘柄が全く入っていません!
代わりに、米国の比率が低く抑えられて、米国以外の先進諸国銘柄が多くなっているという特徴があります。
銘柄 | ICLN | QCLN | PBD |
1位 | Plug Power(6.20%) | Tesla(8.87%) | GreenPower Motor(1.44%) |
2位 | Meridian Energy(5.40%) | Enphase Energy(7.75%) | Flat Glass(1.37%) |
3位 | Enphase Energy(5.36%) | NIO(6.88%) | Tilt Renewables(1.31%) |
4位 | Xinyi Solar(5.02%) | SolarEdge(5.71%) | Xinyi Solar(1.29%) |
5位 | VERBUND(4.83%) | Albemarle(5.49%) | Eos Energy(1.27%) |
6位 | Contact Energy(4.60%) | Plug Power(4.58%) | ReneSola(1.26%) |
7位 | Vestas Wind(4.56%) | Cree(4.18%) | QuantumScape(1.20%) |
8位 | Siemens Gamesa(4.54%) | ON Semiconductor(4.06%) | FuelCell Energy(1.18%) |
9位 | Orsted(4.40%) | Sunrun(3.86%) | Lithium Americas(1.18%) |
10位 | First Solar(4.26%) | First Solar(3.78%) | ITM Power(14.18%) |
上位10銘柄構成比率 | 49.18% | 55.15% | 12.67% |
以上で、パフォーマンスは後にするとして、この3ETFの特徴をまとめると、以下のような感じになります。
- ICLN:高人気、低い経費率、中国銘柄無し、再エネメイン
- QCLN:中人気、真ん中の経費率、EVと再エネの両輪
- PBD:低人気、高い経費率、高い銘柄分散

肝心のパフォーマンスを確認
では、この3ETFのパフォーマンス比較をやっていきましょう。
まず、ここ1年のパフォーマンスをチェックします。
なぜなら、2020年夏のバイデン氏の環境への姿勢が環境テーマに大きな影響を与えたと思えるからです。
また、ESG投資やSDGsが重視されているのもここ数年のできごとですから、まずは1年だけを見てみます。
チャートの系列は青がICLN、水色がQCLN、紫がPBDです。
青ICLNと紫PBDがかなりかぶっちゃっていてわかりにくいですね。
要はこの2つはこの1年のパフォーマンスはほとんど同じです。
一方、少し頭一つ?二つ?抜けているのが水色QCLNです。
でも、この差は、2020年3月のコロナ底からの経済復調のスピードに起因しています。
ハイテク株が多いNASDAQ上場銘柄で構成されるQCLNのほうが幅広い銘柄のICLNやPBDよりも力強くリカバーしているということかと思います。
この1年のパフォーマンスは下のとおりです。
この1年は間違いなくQCLNの圧勝です。
1年間で約2.8倍にもなってます。
- ICLN:+141.62%(約2.4倍)
- QCLN:+177.15%(約2.8倍)
- PBD:+145.95%(約2.5倍)
この3つのETFはすでに運用期間が10年を超えています。
まぁ、環境テーマって長いですから。
パリ協定の前身でもある京都議定書なんて1997年に採択され、第1約束期間は2008年~2012年、第2約束期間は2013年~2020年と、すでに過去のものになってます。
さらに、京都議定書の根本となる気候変動枠組条約は1992年に採択です。
気候変動・地球温暖化問題といってもすでに30年近い年季があるわけです。
なので、直近1年ではなくもっと長期のパフォーマンスを見てみましょう。
ICLNが2008年6月から運用開始なので、それ以降の比較になっています。
どうでしょうか。
疑いようがなく、水色QCLN完勝です。
丁度生まれたのがリーマンショック時だったのは不運なのでしょうが・・・青がICLNにいたってはいまだに運用開始時の価格を大きく下回っています。
設定来の約12年のパフォーマンスは下のとおりです。
長期で見ても間違いなくQCLNの圧勝です。
この1年以外でもQCLNが常に他の2ETFよりも高パフォーマンスを維持しています。
- ICLN:-42.93%(約0.4倍)
- QCLN:+186.29%(約2.9倍)
- PBD:+29.53%(約1.3倍)
でも、環境テーマってほんとこの1年の出来事なんだなということがよくわかりますよね。
京都議定書の約束期間ってなんだったのかと・・・
2010年のカンクン合意ってなんだったのかと・・・
いろいろと国際的に決まっていたけれども、金融市場は全く反応していなかったということでしょうね。
少なくともトランプ大統領以前までは米国も気候変動対策にわりと参加していたのですが。
なので、今回のバイデン氏当選による環境への熱も一過性のものではないと良いですね。
そこは少し不安があります。

環境=再生可能エネルギーだけではない!?
最後にちょっと余談です。
多くの人は気候変動対応=温室効果ガス削減かと思っているかと思います。
でも、実は気候変動対策には「気候変動を抑制しようとする方針」、つまり温室効果ガス削減だけではなく、「適応(Adaptation)という方針」もあります。
平均気温が上がってしまった状況に対応しようとする方針です。
温室効果ガス削減が思うように進まなかったケース(ややそうなりつつある)も想定しておく必要がありますから。
むしろ、最近のCOPではこの適応の議論のほうが活発な気もします。
この適応策は、かなり幅広いです。
たとえば、平均気温上昇による「災害へのインフラ対応」や「空調などのインフラ対応」はすぐに想像できます。
気候の変化で採れる作物も変わってしまうので、「農業システムの変更」なども必要になります。
そして、災害や農業が変わると「保険」も変更となります。
などなど、適応方針によって少しずつ既存の枠組みが変化していくでしょう。
例えば、「適応」という意味の環境銘柄として、HVACR(Heating, Ventilation, Air Conditioning and Refrigeration)もあります。
最後の冷凍はいらないかもしれません。
米国株のHVACR銘柄としては、以下のものがあります。
少し気になったら調べてみてもよいかと思います。
ただ、コロナによる「換気需要」と一緒になっちゃっている感はあります。
- Carrier Corporation(CARR)
- Ingersoll Rand (IR)
- Johnson Controls(JCI)
- Lennox International(LII)
- Trane Technologies (TT)
United Technologies Corporation (RTX)

まとめ
記事をまとめます。
ここがポイント
- バイデン氏が大統領になることで、「環境テーマ」に大きな追い風が吹くことが予想されます
- この環境を取り扱ったETFは結構あるのですが、国内で購入に検討するのは3種:ICLN、QCLN、PBD
- この3つの比較をすると、ここ1年でも、10年でもQCLNが最も良いパフォーマンス
- でも、3つのETFはそれぞれ特徴があるので、特徴を理解した上で購入を検討してみてはどうでしょうか
- ついでに、気候変動への「適応」という視点も考えてみてはどうでしょう